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鴻池朋子展 インタートラベラー 神話と遊ぶ人 鴻池朋子インタビュー

鴻池朋子展 インタートラベラー 神話と遊ぶ人 鴻池朋子インタビュー

今回、霧島アートの森にて『鴻池朋子展 インタートラベラー 神話と遊ぶ人』を開催するにあたり、
本展示の作家である鴻池朋子さんにインタビューを行いました。

なぜアーティストになろうと?
やっていることが既成のどのジャンルにも属さなかったので、「なんだかわからないことをするひと」という意味でアーティストと名乗っているのが正直なところです。私にとって肩書きは他人に向けてわかりやすいように、臨機応変に変化すればよいと思っていて、私自身は子どもの頃より何一つ変わっていません。小さい時からものを作って遊んできたことの延長線上にいるだけで、おもちゃをデザインしていようが、絵を描いていようが同じなんですね。商品を作ればデザイナー、絵を描けばアーティストと言われるなんて、面白いもんだと思っています。
いつもテーマは?メッセージは?コンセプトは?と聞かれてきましたが、ものを作る時には、言葉よりもまず先に手が動き始めます。言葉には表現しきれないものが作品を通じて溢れ出てくる感じ。それはただ単純で、理性では牛耳れない分野の、生きる欲望というものに近いところから沸きだすようです。ただほんとうに単純なこと、何気ないところから創作は始まります。

作品に度々現れるモチーフ(狼、ナイフ、蜂、赤いスニーカー、etc…)をなぜ用いているのでしょうか?どこから得たのでしょうか?
オオカミ、ナイフ、赤いスニーカーを履く子どもの足…などいわゆる両犠牲をもったものたちです(単純に言えば恐いと可愛いいとかが共存してるような)。だからそのモチーフを使えば、結果的に観客という受取り側の振れ幅が大きい、勘違いも大きい、しかもみんなが知ってるステロタイプなものたちです。また同様に、何もアーティストだから特別なものが好きなのではなくて、みんなが好きなものが、私も同じように好きということで、だからこそ何かしら共感を得る感じがするのだとも思います。でもいつもこのモチーフの質問に関しては、ピッタリした答えが思い浮かびません。又、なぜこれらが作品に登場するのかも、実は本人もよくわかっていません。

鹿児島に対する印象
霧島リサーチで何度か鹿児島を訪れるうちに、隼人塚など、縄文に関する神社や遺跡を良く見ました。隼人(ハヤト)とは古代、南九州にいた人たちで、彼等は間違いなく縄文の末梢だったそうです。隼人のことを自然に知るうちに、ふと思ったことがあるのですが、私は故郷が東北の秋田県ですが、その東北に古代、蝦夷(エミシ)という民族が住んでいて、同じく縄文の末梢でした。蝦夷と隼人はお互い、相互の姿を映し出す鏡のような役割をしていたといいます。北と南でとても離れてはいますが、これらの縄文人たちはヤマト政権の勢力に対しての反乱の時期や、その反発の仕方も非常に似ていて、次第に日本列島がヤマト的な影に覆われ、天皇支配のもとに納められる歴史の中で最も果敢に抵抗したのが、南の隼人であり、北の蝦夷だったそうです。
私の『アースベイビー』という作品のインスタレーションには、「縄」と「鏡」という素材が大量に出てきます。縄文という「縄」紋様。蝦夷と隼人というお互いを映し出す「鏡」。これらが私に何の影響を与えたかは分かりませんが、とにかく、あの同じ縄文の風景を眺めていた者同志の血の末裔として、時間と空間を超えて、私と霧島は何かつながっていたのかなとも感じました。
今回の具体的な展覧会に関しては、霧島アートの森は霧島火山帯の栗野岳近くの標高700メートルに位置していて、17ヘクタールの美術館の所有する森もありますので、その立地条件を活かして美術館とその美術館の森、そして近辺の栗野岳温泉周辺をも巻き込んだ立体的な展覧会を開催します。展示会場は大きく「地上」と「地中」の2つに分けられていて、美術館内はアースベイビーを含む立体や絵画などの展示をする「地中」、アートの森の野外と八幡地獄エリアは「地上」です。この内外両者のフィールドを一つの「キリシマ地球」と設定して、地上と地中、光と闇、この世と常世、体内と体外…いろいろ相対する世界を、観客というトラベラーが旅をする展覧会になります。

制作活動と環境について
アトリエは東京のど真ん中ですが、作品によって東京、埼玉郊外の田舎のスタジオを借りたりしてますので、1~2時間の電車の旅は日々しています。また、展示は大掛かりなものもあるので、現地滞在で設置したりインスタレーションをする場合もありますから、東京が制作場所とは限りませんね。また国内外の展覧会の仕事が多く、結果的に様々な場所を旅することになります。そうやって自分がどこかに「連れて行かれる」感覚が面白いです。行きたいと思っていた場所でもなく、唐突にそこから呼ばれて行くことで、途中いろんなものと出会いました。考えてみると自分から決めた旅なんてなかったですね。旅の目的地であるとか仕事をする拠点という場所が重要ではなくて、本人がそれらの場所の間を移動することが、エネルギーを産み出しています。

継続的につくり続けていくのに必要なこと
いくらバジェットがあっても常に私は金欠病です。というような事を発言すると、予算があれば作品がつくれるように思われるかもしれません。が、ものをつくって表現し、作品を売ってお金を稼いでゆけばゆくほど、次第に人間がものをつくる欲望とは、お金の次元で解決できないことがとてもよくわかってきます。つくるとは果てしない欲望です。つまり最近なんとなくわかってきたのは、私が興味があるのは、売れもしないものでもそれでもものを作るという人間、その欲望なのかなと思いました。
ですから、この仕事はいつでもやめたくなったらやめるしかないですね。その欲望がなくなったら。なぜなら、ものをつくる欲望というのは、志しとか意志とかいう人間がコントロールできる秩序ある領域にはいなくて、社会性とは真逆のような野性のような制御の効かない次元にいて、ものをつくる人はそこと常に日常行ったり来たり、やり取りしてるんですね。
たくさんバジェットがあればあったで使いますよ。でも実はお金がなくとも作りだせることがわかっています。それは何も私だけわかっているのではなく、実際私のまわりで一緒に制作に関わっている人たちみんなが感じ、実現していることなんです。
最低限、ご飯が食べられることに感謝し、あとは自分の生きる欲望に誠実でいたいと思います。

鴻池朋子(こうのいけ ともこ)
1960年秋田県生まれ。’85年東京芸大日本画卒業後、玩具の企画に長年携わり’97年より作品を発表。2005年より1年半の間に巨大絵画「物語シ リーズ」を東京都現代美術館、森美術館、大原美術館(個展)等で発表し話題となる。’06年「The Scarecrow」アヴァロフ美術館(ギリシャ)、’08年「広州トリエンナーレ」広東美術館(中国)など海外展も多数。’09年7月東京オペラシティ アートギャラリーにて大規模な個展を開催。絵画、彫刻、アニメ、絵本、インスタレーションなど壮大でスケール観のある表現力で現在もっとも注目される作家である。

「インタートラベラー 12匹の詩人 鴻池朋子展」
会場:霧島アートの森
会期: 2009年10月9日[金]~12月6日[日] 月曜日休園(祝日の場合は、翌日休園)
観覧時間:9:00-17:00(入園は16:30まで)
http://open-air-museum.org/

鴻池 朋子スライドトークショー 「カゴシマに不時着」
日 時 : 10月31日(土) 18:00~
会 場 : La bosco MORI
入場料 : 2,000円(1ドリンク付き)
「ash」期間中、〈OOG〉では鴻池 朋子さんの作品とキャンドル作家135 degrees Fahrenheitの作品が展示されます。

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